第46回 【特別企画】 高校スポーツのあした(2)2010年05月24日

3.学年を考える

【高校野球情報.com】【特別企画】 高校スポーツのあした

【国分先生】

「国分」 久夫先生、全日本のバスケットのコーチもしたこともあるから、全国から先生を慕ってくる選手が入ってくると思うんですけど、そうすると学年によって、運動能力的な、あるいは、バスケットの技術だけだったら上下の差があると思うのですが、この1年、2年、3年の学年を掌握しているのですか?

「佐藤」 練習の、コートの中では1年生も2年生も、みんな関係ありませんよ。これはどこでも同じだと思う。やはり、我々はエンジョイバスケットボールをするチームではない。競技力を高めて、勝たなきゃいけないという使命を学校から与えられていますよ、と。だから、当然、高校生としてね、しっかりしていれば、1年生でもすぐユニホームを着て、試合に出ることは出来る。1年生は、最初は1年生と上級生と戦っていって、1年生で何番目と計算するわけですよね。生徒っちゅうのは(笑い)

「国分」 はい、はい。

佐藤 何番目というのは、的確に査定できますから。ところが、2年生になった時には、自分の学年だけでなく、今度は下級生と競り合わなきゃいけない。上級生ともありますけど。そういう計算だけは長けているわけですよ。だから、今のうちに、もうすぐ1年生が入ってきますので、新1年生が来る前に差を付けておかなければ、あんたたちは抜かれますよ、と。

客観的に体力とか技術とかを判断しながらね。現状というのを伝えてあげて、負けたくなかったら、それは3年生を利用して、2年生を利用して、練習が終わった後に教わりなさい、と。私は練習はね、題材を与えただけで、その題材の中で1人1人が自分のテーマを持ってそれをやっていかないといけないんだと。そして、野球もバレーもそうだと思うんですけど、体で覚えるっていうことの大事さもあるんですけど、考えて行動する。考えて行動するということを習慣化するってことは困難なはずなんですよね。体で覚えるだけでは実践的でない、という私の発想から、1年生あたりは考えながら、といっても、考えられない。でも、なんとか食らいついていく。それから、もう1つ大事なことは、成績のIQ、学校の勉強のIQとバスケットのIQがね、なかなか比例しないんですよ。

「国分」 うん、うん。

「佐藤」 ね、成績が。いくら勉強したといってもよくないと。でも、その子のバスケットIQは高いとかね。私の考えでは成績で努力して集中力ある者が、そういうIQがほかにも応用できるんだと思っているんだけど、そこが私の課題ですかね。

「国分」 私、実際に女子のバレーを指導していて、すごくこう、悩んだことは、ある一定の強さになってくると、久夫先生のところのように「エンジョイバスケット」じゃないんですよというので入ってくる。
でも、そういった目的で入ってくる子どもっていうのは、中学時代にみんなそれぞれの中学校で中心選手なわけですよ。少なくとも自分なりに誇りを持っているというかね。でも、実際に来てみると、同じ学年にすごいやつがいると。こんなわけじゃなかったと。そこでジレンマ、壁にぶつかる。指導者とすれば、次も次も次も試合が待っているから、たとえ学年が下であっても能力の高い者は早く使っていかないといけない。下の学年の者を使えば使うほど連続性が出るというか、次の年につながるわけだから。この辺がなんていうんですかね、バレーでいうなら、お姫様育ち、女王様で来た者がそうじゃなくなる場合があるんですよね。そのままいれる人間もいるんですけど。そういう時って、抜群に素晴らしい1年生の選手が来た3年生と互角だいう時のバランスはどうやってとるんですかね?

「佐藤」 コートの中は一緒だから、勝つためには新戦力として使いますよ、と。ただ、コートを離れてしまえば、あくまでも人生の先輩がいるんだから、敬意を払って、技術を教わること、いっぱい教われるだろうと。そういう差しかないですね。あとは、いいと思われる選手を抜かせないようにこっちもがんばってあげないといけないかなと。3年生と2年生でも、彼とおまえは競っているよと。負けたくねぇのは俺も分かるからとにかくがんばれ。そして、ちょっとポジション変えをするとかね。まぁ、攻撃が下手でも守ることが長けているとかね、個性をもっと出してもらえるように。一番苦しいのは、エントリーを決める時ですよね。30何名の部員から、インターハイはバスケット12名ですから。12名を決める時というのが一番つらい。その時には、私もつい涙が出てきたりするような、ユニホームをこう、渡す時にね、あなたのがんばりとライバルになった人たちに敬意を払いたいと。そう言ってユニホームを渡していくんですよね。

「国分」 佐々木先生はどうですかね。100人くらいの部員の中から。野球は何人でしたかね?

「佐々木」 20名ですね、ベンチに入るのは。

「国分」 あれは、マネージャーも含めて20名なんですか?

「佐々木」 いえ、記録員1人は別枠で。

「国分」 あ、別枠でね。その学年の構成っていうんですかね、どうやって学年のバランスを見るわけですか?ベンチに入れる時。

「佐々木」 これまでで最悪なケースでですね、お兄ちゃんが3年生でベンチに入らずに、弟が1年生でベンチに入ったっていうケースがあったんですよ。

「国分」 うん、うん。

「佐々木」 お父さん、お母さんも複雑だったと思いますし。

「国分」 だろうなぁ。

「佐々木」 結局、子どもたちに事前に、何でもそうなんですけど、先に話す。何か問題が起きてからじゃなくてですね。佐藤先生のように力があるものを入れるんだと。グランドの中は戦いなんだよ、でも、一歩出れば、先輩・後輩の上下関係があってということを話ししますね。
あとは、1年生はそれなりに自信ある子が入ってくるので、「俺はシニアでどうの、こうの」とかですね、そういう子が集まって来ていますので、最初は鼻へし折ることから始めます。過去の栄光に浸って、「俺は小学校の時に記録持っている」とかですね、それが邪魔するような子に声をかけないようにしているんです。小学校の時にですね、全国大会で優勝していると、ところが、それが邪魔している子ってすごくいるんです。中学校の段階で。そういうのが邪魔して伸びないなと思うとですね、声を掛けない子もいるんです。記録がある子でも。
あとは、上下関係ってスポーツで学べるすごくいいところ。今、なくなってきているので、学校生活やいろんな社会では。上下関係を学べるってすごくいいことだと思うんです。人間関係ですね。逆に今、なくなり過ぎてですね。昔、野球では体罰があったりして先輩・後輩でいじめがあって、非常に、そこに気を配るようにしていたんですけど、なくなると、1年生から3年生まで友達みたいになってくるところもあってですね。逆に今、仕切りを入れるようにしながら、尚かつ、暴力的こととか、いじめ的なことがないように学年を作っていくようにはしています。

「佐藤」 うん。

「国分」 要するに、実力差は別としても、学年の壁というか、けじめをつける必要があるということだね。

「佐藤」 世の中に出たら当たり前なことで、人間であれば年長者っていうかね、そういう人たちのがんばりを見て、背中を見て育つということ。よく、3年生の背中を見て、2年生、1年生は育っていくんだ、しっかりしなきゃいけないと言うんですけど。私自らがラインを引くという操作はないですね。

「国分」 なるほどね。

「佐藤」 逆に、じゃあ、スポーツマンとして、先輩、年上をどう思わなくきゃいけないか、どうしなきゃいけないだろうか、そういう風な見方でいっている方が大きいですね。

「国分」 私の場合はね、全国大会につながる大会と、予選を兼ねない試合っていうのが、バレーの場合は試合数がすごく多いなと思うけど、そういうのによって、これが全国大会の予選を兼ねるという場合には学年関係なくベストメンバーでいくと。たとえ負けることがあったとしても、全国大会につながらないという場合には下級生を育てておくと。きちっと分けて、下級生も育てながらいかないと。春高バレーは来年から1月開催で3年生も出られる大会になるんですよ。

「佐藤」 1月にやって3年生が出られる?

「国分」 バスケットのウインターカップのようになると思うんですけど。

「佐藤」 そうですね。

「国分」 今までは3月にあって、1、2年生で試合だったんですよ。みんな中学時代に女王できた人間だからどっかで持ち分を与えてやらないと、プライドがあると思って、直接上につながる試合、万が一負けることがあっても、それがダメージにならない試合によって多少メンバーを入れ替えてユニホームを着て戦えるような時間を作ってやろうとは思ってきたんですけどね。甘いっていえば、甘いんですけど。人間、誰しもが俺も今ここに生きているんだぞと、俺だってここにいるんだぞっていう、そういう場を与えてやれたらなぁと思ってはいたんですけどね。でも、佐々木先生のように100人近い部員がいれば、そうしたいと思ったって、実際には難しい問題ですよね。

「佐々木」 そうですね。

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プロフィール

国分秀男
国分秀男 氏
  • 生年月日:昭和19年3月28日
  • 出身地:福島県福島市生まれ
  • 福島高-慶応義塾大
  • 東北福祉大学特任教授(元古川商業高校女子バレーボール部監督)
  • 昭和48年、京浜女子商業高(現白鵬女子高)から古川商業高(現古川学園高)に奉職。商業科で教鞭を執る傍ら、女子バレーボール部を指導。
    春高バレー、インターハイ、国体で全国優勝通算10回(全国私学大会を含めると12回)。準優勝7回。第3位14回。平成11年には高校女子バレー史上5人目の「三冠王」監督となる。宮城県大会以上の優勝回数150回、全国大会出場77回を誇る。菅山かおる、板橋恵、大沼綾子選手など全日本に多数の選手を送り出している。
    平成16年4月から東北福祉大特任教授に就任し、「健康デザイン論」、「ヒューマンデザイン論」などを講義。全国各地で講演活動も行っている。好きな言葉は「夢を見て 夢を追いかけ 夢を食う」。

プロフィール

佐藤久夫
佐藤久夫 氏
  • 生年月日:昭和24年10月18日
  • 出身地:宮城県仙台市生まれ
  • 仙台高-日本体育大
  • 仙台大学准教授・明成高校男子バスケットボール部ヘッドコーチ 
  • 大学卒業後、宮城県内の公立高で教員として女子バスケットボール10年間、男子バスケットボール4年間の指導を経て、昭和61年、母校・仙台高に赴任し男子バスケットボール部を強化。以来、チームを全国上位に導き、仙台高で14年目、指導者として29年目の平成11年に全国高等学校選抜優勝大会(ウインターカップ)で初の日本一。翌、平成12年には国体、ウインターカップでの2冠を達成。平成8年から平成14年まではU-18日本代表のヘッドコーチを務める。平成14年、仙台高を退職。日本バスケットボール協会強化本部でエンデバー制度の一貫指導システムを構築。
    平成16年、仙台大准教授となり、平成17年に明成高男子バスケットボール部創部と同時にヘッドコーチに就任。創部5年目の平成21年、ウインターカップで明成高初の日本一に導く。実績がさることながら、その手腕は高校バスケ界NO.1と言われている。趣味は墨絵、囲碁、パソコン、カメラなど多彩。志村雄彦(bjリーグ・仙台89ERS)、宍戸治一(bjリーグ・埼玉ブロンコス)、佐藤濯(JBL・レラカムイ北海道)などを育てた。

プロフィール

佐々木洋 氏
佐々木洋 氏
  • 生年月日:昭和50年7月27日
  • 出身地:岩手県北上市生まれ
  • 黒沢尻北高 -国士舘大
  • 横浜隼人高コーチを経て、平成12年秋、花巻東高監督に就任。平成17、19年に全国高等学校野球選手権大会に出場。平成21年、第81回選抜高等学校野球大会に初出場し、準優勝。平成21年、第91回全国高等学校野球選手権大会では準決勝で敗れた。岩手の子どもたちだけでの日本一を目指し、全力で戦う姿で日本中に「花巻東旋風」を巻き起こした。社会科教諭。雄星(西武・菊池雄星)を育てた。

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